5月10日時点で CryptoPunks のフロアは 7万3,200ドルまで戻った。BAYC・MAYC のフロアもじわじわ上向き、Pudgy Penguins は 9,500ドルから 1万2,900ドル へと水準を切り上げている。一方でCoinDeskの集計によれば、NFT市場全体の取引ボリュームは前年比 54.89% 減。「ブルーチップだけが浮上している」という、極端に偏った地形がいま起きている現実だ。本稿では、この戻り相場の数字と、構造的な背景を整理する。
主要ブルーチップのフロア水準
戻り相場の起点は4月末で、5月に入って一段加速した。価格水準を並べると次のとおりだ。
- CryptoPunks: フロア 7万3,200ドル(5月10日時点)
- BAYC / MAYC: フロアがじわじわと上昇基調
- Pudgy Penguins: 9,500ドル → 1万2,900ドル
ここで重要なのは、市場全体の出来高は反対方向に動いている点だ。CoinDeskによれば、NFT全体の取引ボリュームは前年比 54.89% 減。総量は萎んでいるのに、ブルーチップだけが浮上している、という珍しい状態にある。「NFTバブル再来」という見出しで一括りにすると、この乖離を見落とす。
需要が3層に割れた、というのが筆者の整理
ここ数週間の動きを見て、NFT需要は3つの層に明確に分かれた、と整理している。
第一層:ブルーチップPFP。 CryptoPunks、BAYC、Pudgy Penguins。文化的アイコンとしてのプレミアムと、コレクター層の「これだけは手放さない」需要が支える。価格は戻るが、出来高は薄い。美術品市場のリアリティに近い。
第二層:機能性NFT。 チケッティング、ゲーム内アセット、ロイヤリティプログラム。エンタープライズ採用は前年比 18% 増(EarnPark推計)。投機性は低いが、地味に積み上がる領域だ。
第三層:投機的PFPと中堅プロジェクト。 ここはまだ戻り切っていない。Foundation のように、運営側が撤退する例も4月に出ている。
3層をひとくくりに「NFT市場」と論じることに、もう無理が出てきた、というのが筆者の実感だ。
なぜブルーチップだけが戻れるのか
戻り相場の構造を、もう一段ばらしてみる。
理由1:供給の固定化。 CryptoPunks は10,000体、BAYC も10,000体、Pudgy Penguins は8,888体。新規発行はない。需要が薄くても、供給が増えなければ、限界買いだけでフロアは戻る。コレクション系資産全般に共通する特性で、ロレックスのスポーツモデルや絶版漫画の初版本に近い構造といえる。
理由2:IP価値の積み上がり。 Pudgy Penguins は玩具・出版・モバイルゲームへ展開。BAYC は Yuga Labs のIPユニバース戦略に組み込まれる。価格を支えるのは投機ではなく、ブランドとしての継続的キャッシュフローだ。NFTが「画像」ではなく「ブランド権利の所有権証明」として機能し始めている、と読み直してもいい。
理由3:BTC・ETHの相対安定。 トップ層が落ち着いているとき、ハイベータな資産にゆっくり資金が回る。「お金が暇になった」局面でしかブルーチップNFTには戻ってこない、という観察だ。
国内投資家がブルーチップNFTに触れる動線
国内投資家がブルーチップNFTを購入するなら、現実的なパスは限られる。OpenSeaやBlurなどの海外マーケットプレイスを使い、決済通貨はETH。国内取引所でETHを購入してウォレットに送金する流れがスタンダードになる。送金時にはガス代と取引所側の送金手数料を踏まえ、十分なETH残高を準備しておく必要がある。
この経路で実用面の癖が少ないのは Coincheck だ。NFTマーケット併設で「ETHを買ってからNFTに動かす」操作の心理的距離が短い。アプリのUIも初心者寄りで、44銘柄の取扱いがある。NFTそのものに国内取引所で完結する方法はないので、ETHの取得を国内、保管をMetaMask等の自己管理ウォレット、購入をOpenSea、という3段階の構成が現実解になる。各段階で自己責任の判断ポイントが生じることは押さえておきたい。
なおブルーチップは1点 1万〜7万ドル の世界だ。流動性も限定的で、売りたいときに即時に買い手がつかないケースは普通にある。「投資ではなくコレクション資産」という前提認識が前段で要る。
「市場全体」から「個別レイヤー」へ視点を降ろす
ブルーチップの戻りは、NFT市場全体の復活を意味しない。むしろ「3層化が決定的になった」サインだ。第一層と第二層は別の理由で生き残り、第三層は淘汰が続く。判断単位を「NFT市場」から「個別レイヤー」へ降ろさないと、誤った楽観も悲観も生まれる。少なくとも、出来高が前年比 54.89% 減のなかでフロアが戻っているという事実は、市場の質的変化を確かに示している。
出典:CoinDesk、EarnPark推計
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