2026年4月10日、金融庁は暗号資産を金融商品取引法(金商法)の枠内に置き直す改正法案を、第221回国会に提出した。情報開示の義務化、インサイダー取引規制、無登録業者への拘禁刑10年。あわせて2026年度の与党税制改正大綱では、登録業者経由の譲渡益を株式と同じ20.315%の申告分離課税に切り替える方針が示されている。本稿では改正案の骨子と、国内取引所ユーザーへの実務インパクトを3点に絞って整理する。
改正案の骨子は3つ
法案の正式名称は「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」。骨子は次の3点に集約できる。
1. 暗号資産の発行者に年1回の情報開示を義務付け。 発行残高、運営体制、トークノミクス、リスク要因を公的に開示する。株式の有価証券報告書ほどの粒度ではないが、「うちのプロジェクトは何で、どう動くのか」を毎年示す必要がある。
2. インサイダー取引の禁止。 プロジェクト関係者が未公開情報をもとに自分の保有トークンを売り抜ける行為は明確に違法化される。これまで「ラグプル」として雰囲気で叩かれていた行為が、法令上の犯罪として扱われる。
3. 業者名称の変更。 「暗号資産交換業者」が「暗号資産取引業者」に改められる。形式論に見えるが、これは扱う業務が「両替」から「投資」に位置付け直されたサインだ。今国会で成立すれば、施行は2027年度が見通されている。
無登録業者への罰則が「拘禁刑10年」へ強化
無登録業者への罰則は、拘禁刑3年以下・罰金300万円以下から、拘禁刑10年以下・罰金1000万円以下に引き上げられる。3倍超の引き上げであり、金融商品取引法の無登録金融商品取引業の罰則(10年以下)と同水準に揃った形だ。
実務的に重要なのは、この罰則がアフィリエイターや個人インフルエンサーにも事実上波及する可能性があることだ。「○○取引所のリンクから登録すると○○がもらえる」といった国内ユーザー向けキャンペーンを使って海外無登録取引所へ送客する行為は、「取引の取次」として無登録業者の片棒を担いだ扱いになる余地が大きい。
ByBitが2025年10月に日本居住者の新規受付を停止し2026年7月までに撤退を予告したこと、Bitgetが2023年・2024年に金融庁から2度警告を受けたことは、すでにこの方向性の前兆だった。法案成立後は、海外取引所と国内ユーザーの距離は一段遠くなる。
2028年から「20.315%申告分離課税」が適用される見込み
税制側の動きは規制とは別経路で進んでいる。2026年度与党税制改正大綱(自民党・公明党)では、暗号資産の譲渡所得を株式・投資信託と同じ20.315%の申告分離課税へ移行させる案が示された。現行は最大55%の総合課税(住民税込み)であり、税負担は2倍以上の差がつく。
ただし無条件ではない。対象は「特定暗号資産」と呼ばれる範疇に限られ、「暗号資産取引業」として金融商品取引業者登録簿に登録された事業者を経由した取引である必要がある、と整理されている。
つまり、bitFlyer、Coincheck、bitbank、GMOコインなど国内登録業者で売買した分は分離課税の対象になる見込み。海外取引所での取引はこれまで通り雑所得・最大55%扱いのままだ。施行は改正金商法が動き始める2027年半ばの翌年、すなわち2028年1月以降の取引分が想定されている。
1,200万口座と預託金5兆円という前提
この改正は突然降ってきたものではない。金融庁公表資料によれば、国内の暗号資産交換業者における口座開設数は延べ1,200万口座を超え、利用者預託金残高は5兆円を超える。投資経験者のうち暗号資産保有者の割合は7.3%程度だ。
5兆円は日本の個人向け国債残高とほぼ同レンジに入る規模であり、「投資家保護の枠組みを株式と揃えるべき」という主張に反論しにくい状況が、すでにできあがっていた。
業界からは「金商法は重い、ベンチャーが日本を出ていく」という反発もあり、これは正論だ。ただし重い規制があるからこそ、ちゃんと運営している国内事業者のブランド価値は相対的に上がる、という側面も同時にある。
国内ユーザーが今やっておくべきは「経路の整理」
法案成立から実際の分離課税施行までには2年弱の時間がある。すぐ何かが変わるわけではない。それでも今のうちに価値があるのは、自分の暗号資産取引の経路を国内側に寄せておくことだ。
複数銘柄を手数料ゼロで動かしたい層にはGMOコインのような取引手数料無料の選択肢があり、ETH・BTC中心の運用なら板の厚みでbitFlyerが安心材料になる。2028年から始まる分離課税の対象に「自分の取引履歴がきちんと載っている」状態を作っておけば、施行時に迷わない。
規制強化は見出しだけ追うとネガティブに映る。けれども一段下の構造を見れば、これは国内取引所と国内ユーザーが、ようやく株式市場と同じテーブルに座る合図でもある。
出典: 金融庁プレスリリース(2026年4月10日)、自民党・公明党 令和8年度税制改正大綱
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