Ronin、OP StackでEthereum L2へ完全移行──年率インフレ20%超を1%未満に圧縮

Sky Mavisが運営するRoninは5月12日、独立EVMサイドチェーンからOP StackベースのEthereum Layer 2へのハードフォークを完了した。CoinDeskとDecryptの報道によれば、移行に要したダウンタイムは約10時間。さらに同時に発表されたトークノミクス改訂で、RONの年間インフレ率は20%超から1%未満へと大幅に圧縮された。本稿では、この技術移行と経済設計の刷新が何を意味するのかを整理する。

サイドチェーンからL2へ──2022年ハッキングが残した宿題

Roninは2021年、Sky MavisがAxie Infinityの取引コストを下げる目的で立ち上げた専用EVMチェーンだった。当時のEthereumメインネット手数料ではAxieのバトルやアイテム売買が成立しなかったため、独自バリデータの少数体制で安く速く動かす設計を選んでいた。

その設計上の代償は、2022年3月に起きた約6億ドル超の流出事件で露呈した。9人のバリデータのうち5人の鍵が掌握されればチェーンが落ちる構造であり、サイドチェーン運営の限界が業界全体で議論された一件だ。以降、Roninはバリデータ数を増やしてセキュリティを段階的に強化してきたが、「独立EVMチェーンであり続けること」自体の構造リスクは残り続けた。

OP Stackベースのロールアップへ移行したことで、Roninは決済をEthereumに乗せ、Ethereumのセキュリティを継承する形になる。これは単なる技術選定の話ではなく、「Web3ゲーム専用チェーンは最終的にEthereumセキュリティに帰属するほうが合理的」という業界全体の流れを、Sky Mavis自身が選択したという意味を持つ。

トークノミクス改訂──インフレ20%超→1%未満の意味

L2移行と同時に、RONの経済設計も大きく書き換えられた。報じられた主要な変更点は以下の通り。

  • 年間インフレ率:20%超 → 1%未満
  • マーケットプレイス手数料:0.5% → 1.25%(Ronin treasuryに流入)
  • 約9,000万RONを、パッシブステーキング報酬予算からtreasuryへ振替
  • パッシブステーキング廃止 → 「Proof of Distribution」(貢献度連動報酬)へ転換

数字だけ見ると地味に映るかもしれない。だが、年率20%超のインフレを1%未満まで落とすという調整は、RON保有者の希薄化リスクが20分の1以下になることを意味する。流通量の増加カーブが平坦化するため、トークン需給に直接効く。

「Proof of Distribution」の設計思想も重要だ。「ただRONをロックして報酬を取る」モデルから、「ゲーム開発・ユーザー獲得・流動性提供などエコシステムに価値貢献した参加者に報酬を流す」モデルへの転換である。利回り目的で流入する受動的な資本を排除し、生産的な参加者に分配を絞るという方針表明と読める。

Axie一本足からの脱却──現在のRoninゲームラインナップ

「Ronin=Axie Infinity」というイメージで止まっている読者には、現在のラインナップ把握が必要だ。

報じられている主要タイトルは次の通り。

  • Axie Infinity(原点、現在もアクティブ)
  • Pixels(2024年に急成長したファーミング系)
  • Wild Forest(モバイルRTS)
  • Craft World(クラフト系MMO)
  • Cambria(MMO RPG、Burning Game Studio)
  • Fableborne(モバイルアクションRPG)

なかでもPixelsはDAUが一時的に100万を超えた実績があり、Roninの「Axie一本足」状態からの脱却を象徴する存在だった。今回のL2化により、これらゲームの経済活動は全てEthereumのセキュリティ上に乗ることになる。NFTアイテムの保有・取引も、Ethereumのファイナリティを背景にできる構図だ。

それでも残る「Web3ゲームは生き残れるか」問題

技術と経済の刷新は評価できる一方、Web3ゲーム業界全体の体力には依然として疑問符が付く。

5月のCaladan Networkのリサーチによれば、Web3ゲームの93%が事実上死んでいるとされる(この数字には議論の余地があるが、肌感としては概ね近い)。Pixels自身も、2024年のピークからはDAUを大きく落としている。

L2化とトークノミクス再設計は技術・経済設計としては合理的だが、これは「失敗していない期間を引き延ばす」設計であって、「ユーザーを爆発的に取り戻す」起爆剤ではない、という冷静な読み方が必要になる。今後3〜6ヶ月で問われるポイントを整理すると次の3点だ。

  • 既存タイトル(Pixels等)のDAU回復
  • 新規タイトル(Cambria、Fableborne等)の本格ローンチと定着
  • マーケットプレイス手数料が1.25%に上昇しても利用が減衰しないか

この観点での観察フェーズに入ったというのが、現時点で取り得る冷静な評価だろう。

日本人ユーザーがRoninに触れる経路

RONは国内取引所には基本的に上場していない。RONそのものを取得する場合は海外取引所を経由する必要があるが、本サイトの方針として海外取引所アフィリエイトは扱わない。

現実的な道筋として提示できるのは、まず国内取引所でETHを購入し、自分のウォレットへ送金したうえで、別途RONを取得するルートだ。

操作のシンプルさを重視するならCoincheckがわかりやすい。アプリでETHを購入し、MetaMaskなどに送金する画面の動線が整理されており、NFTマーケットも併設されているため、Web3ゲームのNFT周辺の感覚を掴むのにも適している。

板の厚みやセキュリティ重視で考えたい場合はbitFlyerを併用する選択肢もある。ETH建てで大きめのポジションを動かすときには、約定の安心感は厚みのある板のほうが間違いなく高い。

繰り返しになるが、RON自体への投資を推奨する趣旨ではない。Roninを「観察するための入り口」として、まずEthereumエコシステムに直接触れる経路を確保しておく、というのが地に足のついた進め方だ。


※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産や投資商品の購入を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。過去の実績は将来の利益を保証するものではありません。

出典: CoinDesk、Decrypt、Caladan Network(2026年5月)

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