SEC新議長Atkins、クリプトボルトを名指し──DeFi利回りに「ルールメイキングで踏み込む」と表明

米SECのポール・アトキンス議長が5月8日、ワシントンで開催された「AI+ Expo」で、ステーキングや貸出で利回りを生む「クリプトボルト(Crypto Vaults)」を名指しし、規制ルールを整備していく方針を明確に語った。CoinDeskが伝えた発言要旨では、SECはオンチェーン取引、ブローカー、清算、クリプトボルトの4領域すべてに「ルールメイキングで踏み込む」と明言した。匿名性の高いyield farmingの世界に、初めて具体的な規制プランの輪郭が当てられた格好だ。

「執行による規制」から「ルールメイキング」への転換

今回のアトキンス発言で押さえておきたいのは、SECが2025年まで取ってきた「執行による規制(regulation by enforcement)」の路線から、事前にルールを整備する方向へ舵を切ったという点だ。市場関係者の事前予想は「もう少し緩い話」だっただけに、4領域すべてを正面から扱うと述べたことのインパクトは小さくない。

執行ベースのアプローチは、訴訟・行政処分の積み重ねで「あれはダメ、これはダメ」を後追いで決めていく方式で、事業者からは予見可能性の低さが繰り返し批判されてきた。ルールメイキングへの転換は、コンプライアンス投資をしてもよいという判断を業界側に促す効果がある。

クリプトボルトが「証券」になる線引き作業

アトキンス議長が示したのは、クリプトボルトがどの場合に1933年証券法と投資顧問業法の対象になるか、という線引きの枠組み作りだ。yield-bearingな仕組み全般を一律に証券扱いするのではなく、構造別に「対象/対象外」を切り分けていく方針が示されている。

ここがポイントになる。これまでDeFiは「コードが実行しているだけで、誰も責任者がいない」という建付けで運用されてきた。だが今回の整理は、ボルトの設計者・運営者・キュレーターのいずれかが投資判断を実質的に行っているなら、それは投資顧問業に該当しうる、という方向に振っている。コードの背後に「人による裁量」があるかどうか、が判定軸になる構図だ。

「限定的イノベーション・パスウェイ」が示すサンドボックス志向

もう一つ注目したいのが、アトキンス氏が口にした「limited innovation pathway(限定的なイノベーション通路)」という言い回しだ。これは登録なしで一定の試験運用を認める、サンドボックス的な制度の示唆と読める。

英国FCAやシンガポールMASがすでに導入している仕組みに似ているが、米SECがこの方向に舵を切るのは久しぶりだ。前体制下では「sandboxは抜け道」として一蹴されていた経緯がある。今回の転換は、革新的なプロダクトに対しては段階的な実装の余地を残す、という現政権の姿勢を反映したものといえる。

CLARITY法案との連動を意識した「整地」

アトキンス議長の発言は、CLARITY法案の通過を見越して行政側の整地を先回りで進めている文脈で読む必要がある。同法案はすでに下院を通過しており、上院銀行委員会が5月中に審議入り、夏頃の大統領署名が視野に入っているとされる。アトキンス議長自身、この場でCLARITY法を「明確に支持する」と発言した。

つまり、立法(議会)と行政(SEC)が同じ方向に揃いつつある、というのが現在のフェーズだ。法案成立を待ってからルール作成に着手するのではなく、成立を前提に枠組み設計を並走させる、という運営方針が読み取れる。

直近で見ておくべき3つのイベント

今後の動きを追ううえで注目したいイベントは3つある。

1つ目は、5月下旬の上院銀行委員会におけるCLARITY法のマークアップ手続き。2つ目は、SECスタッフによるボルト規制のパブリックコメント募集(噂段階だが、6月予定とされる)。3つ目は、Aave、Pendleなど主要DeFiプロトコル側からの「自主的なコンプライアンス声明」が出るかどうかだ。

DeFiが「無法地帯」として扱われてきたフェーズは、米国側からはこの数か月のうちに区切りがつく可能性がある。短期のボラティリティに振り回されるよりも、規制が明確化していくプロセスそのものを情報源として捉える視点が、いま投資家にも事業者にも必要になっている。

出典: CoinDesk(アトキンスSEC議長 AI+ Expo発言要旨、2026年5月8日)

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